二国間協定の内容(日露二国間協定)

ロシア連邦において削減される核兵器の廃棄の支援に係る協力及びこの協力のための委員会の設置に関する日本国政府とロシア連邦政府との間の協定

日本国政府及びロシア連邦政府は、関係する条約及び他の措置に基づいてロシア連邦において削減される核兵器の安全な廃棄の支援に係る協力を行うことを希望し、日本国及びロシア連邦が1968年に作成された核兵器の不拡散に関する条約の締結国として同条約上の関係する義務を負うものであることに留意し、核兵器の廃棄に関連する環境問題の解決の支援に係る協力を行うことも希望し、ロシア連邦において削減される核兵器の廃棄の支援に係る協力のための適当な政府間機関を設立することが必要であることを確認して、次の通り協定した。

第1条

  1. 日本国政府及びロシア連邦政府(以下「両締約国政府」という。)は、ロシア連邦を締約国とする核兵器の削減及び制限に関する二国間若しくは多数国間の条約又はロシア連邦の一方的措置に基づいて削減される核兵器の安全な廃棄及び関係する環境問題の解決の支援に係る協力(以下「ロシア連邦において削減される核兵器の廃棄の支援に係る協力」という。)を行う。
  2. 両締約国政府は、1に規定する目的を達成するため、政府間機関として、ロシア連邦において削減される核兵器の廃棄の支援に係る協力のための委員会(以下「委員会」という。)を設置する。

第2条

  1. 委員会は、前条1に規定する目的を達成するため、その任務として次のことを行う。
    (a) ロシア連邦において削減される核兵器の廃棄の支援に係る協力の優先分野を決定すること(情報及び意見の交換並びに関係する研究の結果の交換を行うことを含む)。この任務は、ロシア連邦政府が必要とするところを基礎として行うものする。
    (b) ロシア連邦において削減される核兵器の廃棄の支援に係る協力の具体的な計画を策定すること。この任務は、ロシア連邦政府が必要とするところを基礎として行うものとする。
    (c) ロシア連邦において削減される核兵器の廃棄の支援に係る協力のための細目及び手続を(a) 及び(b) の規定に従って定める取決めをロシア連邦政府の指定する当局との間で行うこと。この取決めには、特に事業計画(事業の実施順序を含む。)、第8条にいう確認のための手段に関する規定及び可能な限り第9条の規定に基づく特権及び免除に関する規定を含む。この取決めの規定とこの協定の規定とが抵触する場合には、この規定が優先する。
    (d) (b) にいう具体的な計画を(c) にいう取決めに従って実施し及びその実施を促進すること。
    (e) 政府、政府間機関又は非政府機関から資金の拠出を受けること並びに専ら、第1条1に規定する目的を達成し及びこの条に規定する委員会の任務を遂行するためにこれらの拠出金及びこれらの拠出金から生じる利子(以下「委員会の財源」と総称する。)を使用すること。
    (f) 委員会の活動のために必要な支払を技術事務局を通じて行うこと。
    (g) この協定に基づく協力に係る委員会の活動を評価すること及び(i)にいう委員会の手続規則に従い委員会の財源の使用について拠出者に報告すること。
    (h) (b)にいう具体的な計画を(c)にいう取決めに従って実施するに当たって、この協定の規定が遵守されなかったと委員会が認める場合に(g)の拠出者の意向を考慮して適当な措置をとること。この適当な措置には、必要に応じ、(b)にいう一又は二以上の具体的な計画の実施に当たって委員会の財源の使用を停止することを含むことができる。
    (i) 委員会の手続規則を定めること。
    (j) この協定の目的を達成するために必要な他の活動を行うこと。
  2. 委員会は、1(d)に規定する任務の遂行に当たり、この協定の範囲内で両締結国政府以外の政府、政府間機関及び非政府機関と適当な形態での協力(協力に関する取決めを行うことを含む。)を行うことができる。

第3条

委員会は、総務会及び技術事務局で構成する。

第4条

  1. 総務会は、両締結国政府の代表者で構成する。いずれの締約国政府も、それぞれ一人の代表者(以下「両締約国政府の代表者」という。)を任命する。両締約国政府の代表者は、必要な場合には、総務会の会合に顧問及び専門家を同伴することができる。
  2. 総務会は、第2条に規定する委員会の任務を遂行するための権限を有する。
  3. 総務会の会合は、両締約国政府の代表者が決定する時期及び場所において招集する。
  4. 総務会の決定は、意見の一致により行う。その決定は、委員会の決定とする。

第5条

技術事務局は、事務局長を長とし、日本国に置く。技術事務局の事務局長及び職員は、総務会の同意の下に日本国政府が任命する。

第6条

  1. 日本国政府は、日本国の関係法例及び利用可能な資金の範囲内で、委員会に対し、この協定に基づく協力の実施のために必要と自らが認める資金を拠出する。この拠出金は、委員会の財源として、専ら、第1条1に規定する目的を達成し及び第2条に規定する委員会の任務を遂行するために使用される。
  2. この協定に基づく協力の実施のために必要な資金の委員会の財源からの割り当ては、第2条1(b)にいう具体的な計画及び第2条1(c)にいう取決めを基礎として、日本国政府が行うものとし、日本国政府は、この割り当てにつき委員会に通報する。委員会がその通報を受けたときは、総務会は、第2条1(f)の規定に従い技術事務局に対し必要な支払いを指示する。
  3. この協定に基づく協力に基づく実施のために必要な資金は、2の規定に従い技術事務局を通じて支払われた場合には、償還の対象とならない。

第7条

  1. 委員会は、第2条1(e)の規定に従って資金の拠出を受けること及び委員会の活動のために必要な支払を行うことを目的とする委員会名義の勘定を日本国政府によって指定される日本国の外国為替公認銀行に開設する。
  2. 委員会の財源の事務的管理(1の勘定を含む。)は、技術事務局が行う。

第8条

  1. ロシア連邦政府は、ロシア連邦において、この協定に基づく協力に関し、第2条1(c)にいう取決めに従って供与されることのある物品及び役務の利用並びに第2条1(c)にいう取決めに従って行われることのある委員会の財源のロシア連邦における使用が第1条1に規定する目的のための行われることを確保する。ロシア連邦政府は、ロシア連邦の法令を考慮して、日本国政府がこのことを確認するための手段を提供する。
  2. 日本国政府は、1にいう確認のために必要な最小限度の情報及び資料を要請するものとし、当該確認は、1に規定する物品及び役務が利用されている場所を可能な限り視察することにより又は文書の閲覧その他の手段により行う。
  3. 委員会は、日本国及びロシア連邦が1968年に作成された核兵器の不拡散に関する条約に締約国であることを考慮して、1にいう確認のために必要な最小限度の情報及び資料について適当な基準を策定することができる。

第9条

  1. 日本国政府は、この協定に基づく協力の実効性を確保するために、日本国の法令に従い、可能な限りの協力を行う。
  2. ロシア連邦政府は、第1条1に規定する目的のため、ロシア連邦の法令に従い、委員会及びこの協定に基づく協力の実施に関する職務を遂行する者(以下「この協定を実施する者」という。)(ロシア連邦の国民及びロシア連邦に通常居住する者を除く。)がその任務を効果的に遂行するために必要な特権及び免除を委員会及ぶこれらの者に対して与えるため並びに第2条1(c)にいう取決めに従って供与されることのある物品に対し行政上の、税制上の及び税関に関する便宜を与えるため、必要なすべての措置をとる。これらの特権、免除及び便宜は、国際法の範囲内で、ロシア連邦において削減される核兵器の廃棄に係る支援に関するロシア連邦政府と第三国の政府との間の二国間協定に従いロシア連邦によって同様の物品及び職務を遂行する者に対して与えられることのある特権、免税及び便宜よりも不利でないものとする。
  3. 第2条1(c)にいう取決めに従って供与されることのある物品に対しロシア連邦政府が2の規定に従って与える具体的な行政上の、税制上の及び税関に関する便宜は、必要に応じ、第2条1(c)にいう取決めに規定する。

第10条

  1. ロシア連邦政府は、委員会又はこの協定を実施する者(ロシア連邦の国民及びロシア連邦に通常居住する者を除く。)によるこの協定の実施のための活動の遂行中に生じ又はその遂行に起因する損害がロシア連邦において生じた場合には、その請求に関する責任を負う。
  2. 1の規定は、1にいう損害が委員会又はこの協定を実施する者(ロシア連邦の国民及びロシア連邦に通常居住する者を除く。)の故意による行為の結果生じた場合には、適用しない。

第11条

この協定の解釈又は適用に関して紛争が生じた場合には、総務会の枠内で両締約国政府の協議により解決する。

第12条

この協定は、日本国又はロシア連邦を締約国とする現行の二国間又は多数国間の他の条約その他の国際約束に基づくそれぞれの国の権利及び義務に影響を及ぼすものではない。

第13条

  1. この協定は、署名の日に効力に生じ、いずれか一方の締約国政府が他方の締約国政府に対しこの協定を終了させる意思を書面により通告した日から6箇月を経過するまで効力を有する。
  2. この協定は、両締約国政府間の書面による合意により改正することができる。